2020年02月12日

中原中也「冬の日」


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  ノースポール


   中原中也

   冬の日 「中原中也全詩集」より

私を愛する七十過ぎのお婆さんが、
暗い部屋で、座って私を迎えた。
外では雀が樋に音をさせて、
冷たい白い冬の日だつた。

ほのかな下萠(したもえ)の色をした、
風も少しは吹いてゐるのだつた、
私は自信のないことだつた、
紐を結ぶやうな手付をしてゐた。

とぎれとぎれの口笛が聞こえるのだつた、
下萠の色の風が吹いて。

あゝ自信のないことだつた。
紙魚(タコ)が一つ、颺(あがって)ゐるのだつた。

この正月に西脇順三郎と同じ題名の「冬の日」をUPしたが、今日は中也の冷たい白い「冬の日」を取り上げた。寒風が吹き、風が鳴り響く真冬の日、風よタコよ、お前達は何しにきたのかと、中也らしく一匹のタコに問うている。

下萠(したもえ)=早春、地から草の芽が萌え出ること。
颺(あがって)ゐる=風に吹き上げられる。昭和3年(1928年)真冬1月の作品。 
  
  
早春賦     作曲 中田章  作詞 吉丸一昌 
     

日本を代表するソプラノ歌手。佐藤しのぶさん
(1958年〜2019年)が昨年10月61才の若さで亡くなった。
ご冥福をお祈り致します。

「賦」=早春に漢詩を歌ったり作ること。間もなく暖かくなる3月がやってくる。さて、佐藤しのぶと言えば荒城の月、これも併せて。  作詞 吉丸一昌 編曲 三枝斉昭ら(曲)中田章

  荒城の月 作曲 瀧廉太郎 作詞 土井晩翠


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 たつの市 世界梅公園陳列



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2020年01月30日

アールヌーボ ミュシャの世界

アールヌーボ   


   ミュシャの世界

19世紀末より〜20世紀にかけてヨーロッパを中心にアールヌーボ(Art nouveau)が新しい芸術として開花した。様式にとらわれずに、家具、宝飾、絵画 グラフィック装飾などで、多くの芸術家達が挑戦した。

アールヌーボのスタートは、1895年12月26日、パリ・プロヴァンス通りの美術商「メゾン・ド・ラール・ヌーヴォー」( Maison de l'Art Nouveau)の、お店の看板から始まった。

アルフォンス・ミュシャ(1860年 - 1939年)も、商業用ポスターや装飾パネルなどで、アールヌーボ画家としてパリで活躍し、油彩画による厳粛な宗教画でも成果を上げている。

50才の時、残り人生を我が同胞に捧げるとパリを去り祖国プラハで、民族の独立、自由の象徴を目指し、17年間かけて(1910年〜1928年)壁画サイズの「叙事詩」20点を制作する。

 ミュシャによる 「スラブ叙事詩」

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「原故郷のスラブ民族」  右端人物を、左の日本展ポスターAlfons Muchisに使う。


「スラブ民族の賛歌」
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く光の中に人々が配置されて、独立への強い意思を表示している。人々をチェコの希望の星として描いたのである。1918年にチェコはオーストリア、ハンガリーの二重帝国から独立を勝ち取った。
中央部の画面には聖なる葉の輪を両手でかざした青年がスラブの賛歌を表している。その青年の後ろに大きくイエスキリストが描かれている。

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「セルビア皇帝ステファン・ドウシャン」  「フス派の王ポジェブラディとボヘミア王
 東ローマ帝国の戴冠式。         クンシュタート」権威争いの場面。 

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 「スラヴ式典礼の導入」          「ロシア農奴解放の日」 モスクワの
モラフスキー・クロムロフ城         赤広場で告げるロシアの役人と人民。 
モラビアでスラブ民族初の城を築く。 

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 「ペトル ・ヘルチツキー」中央人物。   「ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭」
      
左上 絵画のサブタイトルー悪をもって悪に報いるべきではないー

反フス派により街に攻撃をしかけられ、フス派全員の殺害と市民の大量虐殺が描かれている。ペトル・ヘルチツキーは謙譲と忍耐と労働を、著作や説教で主張している。

「悪をもって悪に報いるべきではない」の提言。暴力によらない宗教革命の方法を求め実践する、中世最大の偉人のへルチツキーを中心として、当時のチェコは、ヨーロッパにおける社会思想で最先端にいた。

カトリックのヴワディスワフ王は、チェコ国内のフス派を帰服させようとした。ところがヘルチツキーのフス派の市民達が暴動を起こし(1483年)、自分たちの信仰を守り抜いた。

右上 絵画のサブタイトル ー神々が戦いにあるとき、救済は諸芸術の中にあるー

スラヴ族が神を称えて収穫の祝いの宴を行う。バルト海沿岸はデンマーク軍によって征服され神殿は壊され、スラヴの文化は衰退の一途をたどる。その過去、現在、未来を描く。

白百合の中の聖母(下2枚)

The Madonna in Lilies 1905年

アールヌーボを代表する画家のミュシャ、エルサレム教会の装飾画に構想していた「白百合の中の聖母」をアメリカ滞在期に制作した。904年から1910年までに数回滞在)に制作した。
純潔のシンボルである百合の花に包まれ、チェコの民族衣装を纏った聖母マリアが、少女を愛しく包む油彩画。(1905)
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  ミュシャのポスター (下2枚)

左下、演劇「公妃ジスモンダ」(GISMONDA) 

アテネ公妃(ジスモンダ)役に扮する女優サラ・ベルナール“SARAH BERNHARDT”の名が見える。花を髪に飾り演劇のクライマックスを象徴するシュロの葉を手にしている。

“GISMONDA” の文字は舞台タイトル。舞台はパリにあるルネサンス座。足元に劇場名の “TEATRE DE LA RENAISSANCEと書かれている。
女優サラは、「ジスモンダ」のポスターを見て、なんて素晴らしい!と、これからは私のために描いて!と叫んだ。

右下、
お菓子のビスケット・シャンパンの宣伝広告ポスター。
ルフェーヴル・ユティル社の愛称 リユ  “ LU” のフランス ビスケット。
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  演劇  公妃ジスモンダ(Gismonda)  ルフェーヴル・ユティル社のビスケット広告       

       ミュシャ その他 
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   ヒヤシンス姫                            草桜         羽根

  きょうの音楽

シベリウス : ヴァイオリン協奏曲  ニ短調 作品47

バイオリン ヒラリー・ハーン

前回に続いてヒラリ・ハーンのすばらしいヴァオリン演奏。北欧フィンランドの匂いが一杯に満ちた凄みのある曲で、第1楽章のスケールの大きさはバイオリン協奏曲にしては別格。

シベリウスは出来上がってから、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の出だしの第1楽章を参照に改定した。この冒頭部分について「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」と語る。
Sibelius : Concerto pour violon (Hilary Hahn)
            
   
                                            



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2020年01月23日

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番



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きょうの音楽
 
  ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調作品26

フランクフルト放送協会交響楽団
指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ(Andres Orozco-Estrada
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン( Hilary Hahn)

メンデススゾーンやブラームスにも匹敵する名曲である。そのブルッフの名曲、ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調を、百年に一度と評される女性ヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン(1979〜アメリカ ヴァージニア州レキシントン生まれ、ボルティモア出身)が熱演している。

情熱を込めたヒラリー・ハーンの演奏、誰しもが愛しくなるドイツ ロマン派のメロディーが、第2楽章のアダージオから泉のように湧き出てくる。

メンデスゾーンやブラームスのヴァイオリン協奏曲は30才半ばの作品であるが、ブルッフは若い26〜27才の作品である。この年で、ブルッフは既にライン川沿いの美しい街コブレンツの音楽監督を務めていた。

下記は、名ヴァイオリン奏者ヒラリー・ハーンが獲得した数々の受賞内容である。僅かの間にこれだけ多くの賞を受賞している。

1997年の初アルバムから2003年グラミー賞、受賞計3回、ノミネート1回
フランスのディアパゾン・ドール賞受賞
ドイツのエコー・クラシック賞受賞
フランスのル・モンド・ラ・ミュージックのショック・アワード受賞


Bruch: 1. Violinkonzert ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Hilary Hahn ∙ Andres Orozco-Estrada


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2020年01月16日

積もった雪  金子みすづ

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        積もった雪  

                     金子みすゞ                                

  上の雪
  さむかろな。
  つめたい月がさしていて。

  下の雪
  重かろな。
    何百人ものせていて。

    中の雪
    さみしかろな。
    空も地面じべたもみえないで。

    あかい椿は伐きられたし、
    黒い御門もこわされて、

    ペンキの匂うあたらしい、
    郵便局がたちました。 
 

    郵便局の椿
 
  あかい椿が咲いていた、
  郵便局がなつかしい。
  いつもすがって雲を見た、
  黒い御門がなつかしい。
 
  ちいさな白い前かけに、
  赤い椿をひろっては、
  郵便さんに笑われた、
  いつかのあの日がなつかしい。
 
  あかい椿は伐られたし、
  黒い御門もこわされて、
 
  ペンキの匂うあたらしい、
  郵便局がたちました。


踏みつけれる雪がそれぞれ上、中、下にあるという表現が楽しい。兄、妹、弟にも分け隔てなく、みすゞの故郷山口県長門市にも淡雪が降る。

幾重にも雪が踏まれ、またその上に雪が積る。あとから勝手きままに、ぬかるみになるために雪は降ってくる。何とも金子みすゞ らしい。

赤い椿が咲いていた郵便局が壊されて椿が伐られたとか、ところでいまは雪中4花の寒椿、蝋梅が真っ盛り。残り二つの水仙と梅がまもなく揃って咲く様子、暫くは待ち遠しい。

赤い椿白い椿と落ちにけり      (河東碧梧桐)
蝋梅や 雪うち透す 枝のたけ  (芥川龍之介)
水仙の 香やこぼれても 雪の上 (加賀千代女)
一輪 一輪ほどの 暖かさ   (松尾芭蕉の弟子服部嵐雪)



きょうの音楽

ラフマニノフ   ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18 

ピアノ:アンナ・フェドロヴァ(Anna Fedorova 1990年ー ウクライナ・キエフ出身)

演奏:北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団(Nordwestdeutsche Philharmonie)
指揮:マーティン・パンテレーエフ(Martin Panteleev)
フェドロヴァの気品溢れるすばらしい演奏で感動させられる。
ルービンシュタイン国際ピアノコンクール(2009年)で優勝以来、アムステルダムの「コンセルトヘボウ」やパリのコンサートホール「サル・コルトー」などで演奏を重ねている。


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2020年01月09日

西脇順三郎 冬の日

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  「冬の日」    西脇順三郎  
        
                近代の寓話(1953年)             

   或る荒れはてた季節
   果てしない心の地平を
   さまよい歩いて
   さんざしの生垣をめぐらす村へ
   迷いこんだ
   乞食が犬を煮る焚火から
   紫の雲がたなびいている
   夏の終りに薔薇の歌を歌つた
   男が心の破滅を歎いている
   実をとるひよどりは語らない
   この村でラムプをつけて勉強するのだ
   「ミルトンのように勉強するんだ」と
   大学総長らしい天使がささやく
   だが梨のような花が藪に咲く頃まで
   猟人や釣人と将棋をさしてしまつた
   すべてを失つた今宵こそ
   ささげたい
   生垣をめぐり蝶とれる人のため
   迷って来る魚狗と人間のため
   はてしない女のため
   この冬の日のため
   高楼のような柄の長いコップに
   さんざしの実と涙を入れて

”乞食が犬を煮る焚火” この凄まじい表現は大いなる怒りと驚きである。夏には薔薇の歌を歌ったはずなのに、冬を迎えて心の痛みに激しく襲われる。

失楽園のミルトンのように勉強せよとの声が、耳元に聞こえてくる。だが、しかし、ミルトンの理想を越えてしまった自分の心の痛みは、もう耐え切れないのである。

梨の白い花が咲く初夏の日を想いつつ、長柄のコップのさんざしの実に、我が涙を流すのである。何としてでもこの残酷な冬の日を、今宵でお終いにしたいと激しく嘆いている。

西脇順三郎(1894 -1982年明治27〜昭和57年)詩人であり英文学者で、文学博士慶大教授。
非現実主義のシュルレアリスムの思想でも活躍し、ノーベル文学賞候補にも挙がっていた。荻原朔太郎の影響を受けている。


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きょうの音楽

シューベルト ピアノ三重奏 第2番 変ホ長調 作品100 D292

演奏 トリオ・ワンダラー(1987年に結成されたフランスのトリオ)
ジャンマルク・フィリップ=ヴァルジャベディアンリン(ヴァイオリン)
ラファエル・ピドゥ(チェロ)
ヴァンサン・コック(ピアノ)   

シューベルトらしい、寂寥感を漂わせたドラマチックなメロディが流れてくる。若きシューベルト、亡くなる前年(1827年30才)の作品。


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2020年01月02日

雪降る雲の彼方は、もう春だ

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 伊勢・二見浦

      

   冬ながら 空より花の 散りくるは 
            雲のあなたは 春にやあるらむ
  

                      古今和歌集 冬歌より、清原深養父


雪降る雲の彼方は、もう 春だ

冬でありながらも、空からは花の散るような雪が降る。あの雲の向こう側はもう春なのであろうか。お正月を迎えると、心は自然に春へと向かって行く。 

   

伊勢二見浦、興玉神社

お社は伊勢湾に注ぐ五十鈴川の河口に形成された三角州にある。ここで沐浴をしてから伊勢神宮に参拝していたという。

神社付近で採れる海草を使った幣を用い、不浄を取り除く禊祓(みそぎ・はらえ)があり、お伊勢さんのセット神社として人気がある。

祭り神は天照大神の天孫降臨を道案内をした猿田彦。夫婦岩の沖合700メートルの海に沈む猿田彦大神縁の興玉神石を拝む。行く道に迷っている人は猿田彦が救ってくれる。


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   二見浦 興玉神社


きょうの音楽

  

2020年 ニューイヤーコンサート ウィーン
 

 ウィーン・フィル 
指揮・アンドリス・ネルソンス1978年ラトビア・リガ生まれ。新たな年を寿ぐ、ウィーン・フィルの華麗なワルツとポルカ。2020 New Year Concert Vienna *

収録情報
ウィーンの血
トリッチ・トラッシュ・ポルカ
ワイン女性の歌
入場行進曲
皇帝ワルツ
ウィーン ボン ボン-ボン ワルツ
光の血
南のバラ
ウィーンの森の物語
レモンが終わる場所
Eljen A Magyaポルカ
春の声
朝刊
私の宝物ワルツ
アネン・ポルカ
アーティストの人生
美しき青きドナウ
ラデッキー行進曲



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2019年12月26日

大晦日がやってくる

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    明日よりは 春の初めと 祝ふべし 
               今日ばかりこそ 今年なりけれ  
                     
                                          続後撰集・冬 藤原公実


この歌は大晦日を詠んだ歌として知られている。大晦日の歌は万葉集にはなく、その他を探しても中々見つからない。建長三年(1251)10番目の勅撰和歌集「続後撰集」にあった。

晦日とは、みそか、つごもりなどと呼び、月が出ないひと月最後の日を指す。旧暦では30日が新月となり月が隠れて晦日となる。そして1年の最後が大晦日である。

12月31日は年に一度の大晦日。それが間もなくやってくる。
大晦日は正月に迎え入れる歳神様(としがみさま)を祭るための準備の日でもあり、気になる家の掃除が待っている。

家をよく磨いておけば、不自由なく食べて暮らせるよう、歳神様が農作物を守り豊かな暮らしをもたらしてくれる。その昔、そう言われていた。

大晦日は神を迎えるために掃除に費やして、真夜中には108ツの鐘を打ち煩悩を取り去る。そして、清らかな心で新年を迎え神にお礼をするため初詣する。

少し昔までは元旦はみな仕事を休み、厳粛に神を迎えた。これが子供の頃からの日本のお正月であった。


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きょうの音楽

    モーツァルト フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K299

クロアチア室内オーケストラ(Croatian chamber orchester)
イゴール・タタレヴィッチ(Igor Tatarević, conductor) 指揮
クロアチア音楽院コンサートホール(ザグレブ、2013年)

フルート:タマラ・コハ・マンディッチ (Tamara Coha Mandić, flute)
ハープ :ダイアナ・グルビシッチ・チコヴィッチ(Diana Grubišić Ćiković, harp)

今年もいよいよ残り少なくなった。ことし最後に相応しい曲を探していたが、見つけたのはやはりモーツアルト。楽しめる協奏曲にフルート&ハープのハ長調がある。

フルート&ハープハは、本来相性が合わない楽器のようで、この組み合わせは他にはなかなか見当たらない。それを難なく組み合わせて、フランス風の優雅なサロン音楽になっている。

Mozart Concerto for Flute Harp and Orchestra in C major, K 299 - complete - LIVE  


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2019年12月19日

篝火花 シクラメン

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  篝火花・シクラメン

シクラメンの 学名はラテン語のCyclamen persicum (シクラメン・ペルシカム)で、ギリシャ語の回転するkyklon(英Cycle)が語源。和名は篝火花ーかがりび ばなという。
                 
西欧では「アルプスのスミレ」と呼び、古くから塊茎部の澱粉を食用とされた。豚が球根を掘り起こし食べていたのでSows bread「豚のパン」とも呼ばれたが、何とも花には似合わない。

大航海時代には船舶用の食材でもあったが、じゃがいもの出現で外された。日本では、ある植物学者が「豚の饅頭」と翻訳したため、明治初期頃は「豚の饅頭」とも。

その後、 植物分類学の牧野富太郎博士が新宿御苑に勤めていた時、歌人で社会活動家の九条武子が、牧野博士に「これは篝火(かがり火)が燃えている様ですね」

と言った。それで和名が品のある「篝火花」となった。冬から春にかけて咲き、今が真っ盛り。現在では、ブルーの花色が希少性が高く人気がある。

青色は、高橋康弘氏とサントリーフラワーズとのコラボ生産で、 「青い花」シリーズとして、これまでに青いカーネーション「ムーンダスト」や世界初の青いバラの「アプローズ」などを

生み、青い花シリーズの第三弾がシクラメン。実際には紫であるが、この世界、難しいブルーの花作りは大いなる願望のようだ。

今年もまた植物園のシクラメン展を観たが「江戸の青」が人気投票で1番人気。形や色の濃淡が少しずつ違う「胡蝶」 「月下」 「瑠璃王」 「晴天」などもあり、同じブルーでも多彩。

花言葉は、「遠慮」「気後れ」「内気」「はにかみ」。シクラメンの花が下向きで恥じらっているからと言う。ところで、どの花もシクラメンと同じように、雨から花粉を守るために下向きに咲いているのだが、、。
                                                            
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  ピアス                 フェアリーピコ

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 江戸の青                                                スクリュースターピンク 


 きょうの音楽

モーツァルト レクイエム ニ短調 K. 626

フランス国立管弦楽団
フランス放送合唱団
指揮:ジェームス・ガフィガン
    (1979年生まれ、アメリカ ニューイングランド音楽院)

  ソプラノ      : マリタ・ソルベルグ(オスロ国立オペラ芸大、ノルウェー音楽アカデミー) 
  メゾソプラノ: カリーヌ・デシェイス(フランス パリ国立音楽院)
  テノール      : ジョセフ・カイザー(カナダ モントリオール) 
   ベース        : アレクサンドル・ヴィノグラードフ(ロシア モスクワ音楽院)

2017年6月29日サン・ドニ・フェスティバルの一環としてサン・ドニ大聖堂から生中継されたコンサート。モーツァルト未完のレクイエムが懐かしくなって調べていると、このフランス放送合唱団の素晴らしい演奏に出会った。

指揮者もアリア歌手も、みんな出身国が違っているのもさすがフランス。年末の第九にも決して負けないモーツァルトの名曲レクイエムが、新世代の人達による自然な演奏で心地よく聞ける。

Mozart : Requiem (Orchestre national de France / James Gaffigan)


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 姫路植物園 シクラメン展                   



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2019年12月12日

廣瀬川 萩原朔太郎

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  「廣瀬川」  萩原朔太郎  
        (純情小曲集1924年 大正13年)
   
  廣瀬川  白く流れたり

  時されば 皆幻想は消え行かむ。 
 
  われの生涯らいふを釣らんとして 
 
  過去の日 川邊に糸をたれしが 
 
  ああ かの幸福は遠きにすぎさり 
 
    小ちひさき魚は瞳めにもとまらず。

朔太郎の「純情小曲集」自序には次のことが書かれている。

『やさしい純情にみちた過去の日を記念するために、このうすい葉つぱのやうな詩集を出すことにした。純情小曲集「郷土望景詩」十篇は、比較的に最近の作である。私のながく住んでゐる田舍の小都邑(村)と、その附近の風物を詠じ、あはせて私自身の主觀をうたひこんだ』

朔太郎が育った群馬県前橋を流れる廣瀬川は、以前よりも流れが速くなったのか白く流れ、青春の夢は幻想と化し、あの幸もいまは遠くへ過ぎ去った。

故郷廣瀬川の畔で過ごした青春時代、小さな魚の眼にも止まらぬ速さで駆け抜けて終わった。朔太郎39才(大正14年)の望郷回顧である。小さな魚の眼の表現はさすがである。


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きょうの音楽

モーツァルト  ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K219 

ヴァイオリン アンネ=ゾフィ・ムター(Anne-Sophie Mutter, 1963年 - )

この第5番は、「古今のヴァイオリン協奏曲の名曲と比較しても全く遜色のない作品」と讃えられている。第3楽章に当時流行ったトルコ風の行進曲を挿入してる。

ANNE SOPHIE-MUTTER - Mozart Violin Concerto # 5 ~ Camerata Salzburg 



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2019年12月05日

「吹く風を心の友と」 中原中也

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     「吹く風を心の友と」 中原中也
             
             (未発表詩篇〜早大ノート1930年〜1937年)
   
           吹く風を心の友と
   口笛に心まぎらはし
   私がげんげ田を歩いてゐた十五の春は
   煙のやうに、野羊(やぎ)のやうに、パルプのやうに、

   とんで行って、もう今頃は、
   どこか遠い別の世界で花咲いてゐるであらうか
   耳を澄ますと
   げんげの色のやうにはぢらひながら遠くに聞こえる

   あれは、十五の春の遠い音信なのだらうか
   滲(にじ)むやうに、日が暮れても空のどこかに
   あの日の昼のままに
   あの時が、あの時の物音が経過しつつあるやうに思はれる

   それが何処か?―とにかく僕に其処(そこ)へゆけたらなあ…
   心一杯に懺悔して、
   恕(ゆる)されたといふ気持の中に、再び生きて、
   僕は努力家にならうと思ふんだ―   

いま15の春は高校1年生。実に甘酸っぱく、驚きと迷いの中でいっぱい学ぶ。この詩が高1の教科書に載せられ、多くの人より共感を得て、思い出の詩になっている。


きょうの音楽

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218(第1〜第3楽章) 

バイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター(1963〜ドイツ)

ANNE- SOPHIE MUTTER ~ Mozart Violin Concerto # 4 in D major
 ~ Camerata Salzburg   

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 水面に浮かぶ 「逆さ紅葉」
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 姫路好古園

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