2019年03月15日

朧月夜

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文部省唱歌 朧月夜
  NHK東京放送児童合唱団

唱歌 「朧月夜」

作詞・高野辰之 作曲・岡野貞一 (大正三年)


       菜の花畠に、入日薄れ、
   見わたす山の、霞ふかし。
   春風そよふく、空を見れば、
   夕月かかりて、にほひ淡し。

       里わの火影ほかげも、森の色も、
     田中の小路をたどる人も、
 蛙       かはづのなくねも、かねの音も、
        さながら霞める 朧月夜。




菜の花畑に沈む夕陽は幻想的な色彩を帯び、山裾の霞みはよりいっそう深まって、夕月夜は朧月夜と名を変えてしまう。

人里の家々の灯り、田のあぜ道を歩く人、蛙や夕闇の鐘の音など動物や自然が霞み、魅惑的な美しさを帯びる。

大正3年に小学唱歌6年用として生まれたが、唱歌の中でも「故郷」などと並ぶ秀作である。高野辰之の故郷は長野県中野市、岡野貞一は鳥取市にある。

二人が育った故郷の思い出は、長い間人々の心に忘れられない歌となり残されてきた。また同じ頃、巷では大2にカチューシャの唄、大5には、ゴンドラの唄が大流行していた。

高野、岡野の二人により、大正ロマンに合わせたかのように、「紅葉」「春の小川」「故郷」など日本人の心に残る多くの名曲が生まれた。
(明治44年「紅葉」、大正元年「春の小川」、大正3年「朧月夜」「故郷」)


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 3月8日 ひょうごフラワーセンター



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2019年03月09日

ネトレプコ 椿姫「乾杯の歌」

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ヴェルディ:歌劇 椿姫より 「乾杯の歌」

オペラのアリアで一番の人気は椿姫「乾杯の歌」。椿姫の原題La traviataは「道を踏み外した女」を意味するが、舞台は社交界華やかな19世紀半ばのパリ。

物語の第一幕で、青年貴族アルフレードと高級娼婦ヴィオレッタは初めて出会い、二人は意気投合して「乾杯の歌」を歌う。

心地良い乾杯の歌には、かすかな憂いが漂い、青年アルフレードはグラスを片手に情熱的に歌う。続いてヴィオレッタや仲間達も加わりみんなで楽しく二人を祝う。

アルフレードの父に反対されて別れた二人。ヴィオレッタが結核で死ぬその日に、父から策略を知らされたアルフレードは、謝罪と許しを乞うためヴィオレッタを訪れて再会する。

純愛の恋の顛末が何とも愛おしい物語。見つけたyou tube、アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)とローランド・ビリャソン(テナー)の組み合わせの良さ、そして椿姫ヴィオレッタの紅花一輪、舞って歌う演出が心地よい。

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ソプラノ:
アンナ・ネトレプコ - Anna Netrebko (1971〜)47才ロシア出身のソプラノ歌手。ウィーンおよびニューヨークに在住。今回取り上げて3度目。卓抜した実力のみならず、その美貌によっても名高く現代を代表するオペラ歌手。

テノール:
ローランド・ビリャソン - Rolando Villazon (1972〜)46才 メキシコ生まれ、フランスの市民権を得てフランスに住む。

ソプラノのネトレプコの素晴らしさ は承知であるが、まだ聞き慣れないテノールのローランド・ビリャソンがいい。テノール歌手として小説も書く個性的な歌手。



ヴェルディ 椿姫より 「乾杯の歌」  

作詞:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(Francesco Maria Piave)  

Alfred
Libiamo, libiamo, ne' lieti calici
友よ、いざ飲みあかそうよ
che la bellezza infiora,こころゆくまで
e la fuggevol, fuggevol, ora誇りある青春の日の
s'inebrii a volutta!楽しいひと夜を!
Libiam ne' dolci fremiti若い胸には
che suscita l'amore,燃える恋心
poiche quell'occhio al coreやさしいひとみが
onnipotente va!愛をささやく
Libiamo, amore, amor fra i caliciまたと帰らぬ日のために
piu caldi baci avraさかずきをあげよ!

Violetta

Tra voi, tra voi sapro dividereこの世の命は短く
il tempo mio giocondo;やがては消えてゆく
tutto e follia, follia nel mondo,ねー だから今日もたのしく
cio che non e piacer!すごしましょうよ!
Godiam, fugace e rapidoこのひとときは
e il gaudio dell'amore,ふたたびこない
e un fior che nasce e muore,むなしくいつか
ne piu si puo goder!過ぎてしまう!
Godiam, c'invita, c'invita, un fervido若い日は夢とはかなく
accento lusinghier,消えてしまう
  
ah! ah! ne scopra il di,あー あー 過ぎてゆく
ah! ah! ne scopra il di,あー あー 過ぎてゆく
ah! si!あー あー

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  相生市 万葉岬 3月7日
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2019年03月03日

愛の妙薬「人知れぬ涙」

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 ドニゼッティ作曲 愛の妙薬より 「人知れぬ涙」

ガエターノ・ドニゼッティ作曲の歌劇「愛の妙薬」第2幕第2場で、アリアの最高傑作「人知れぬ涙」(Una furtiva lagrima)が歌われる。

スペイン・バスク地方の小さな村、主役のネモリーノ は 単純で間抜けな貧農の若者。お金持ちでちょっと高慢で美人、頭もいい村娘アディーナに好かれたい。その気持ちでネモリーノは怪しい薬売りの博士から「恋がかなう愛の妙薬」を手に入れた。

中身は騙されて買った普通のワインである。薬売り博士はアディーナにも愛の妙薬を売りつけようとするが、妙薬は私のこの瞳のなかにあると言ってとりあわない。ネモリーノが秘薬を手に入れるお金の為に、命の補償がない軍隊に入って秘薬を買ったと知ったアディーナは涙する。

アディーナの瞳に涙が浮んだのを見たネモリーノは、彼女の愛を確信した。その勢いで飲んで歌ったアリアは、アディーナを想う気持ちがそのまま美しい旋律となった。自分が好かれていると知ったネモリーノ、精一杯感謝の気持ちで、愛の為ならもう死んでもいいと歌った。

ちょうどその時、叔父からの大きな遺産も入り、村娘達からも一躍持てはやされる男となって一変する。偽薬売りはアディーナとネモリーノが妙薬のおかげで幸せになったと皆に宣伝し、ネモリーノは買った妙薬には魔法の効果があるといい、そのことは決して忘れないと偽薬売り博士に感謝する。

最近ロシア音楽ばかりUPしていたが、いよいよ花咲く3月。きょうの音楽はイタリア歌劇、愛の妙薬より「人知れぬ涙」。その昔、カレーラス、パヴァロッティもよく歌ったが、ここはドミンゴが懐かしい。

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きょうの音楽

歌劇 愛の妙薬より 人知れぬ涙

テノール:プラチド・ドミンゴ

Placido Domingo - Una furtiva lagrima from L'Elisir d'amore


 Una furtiva lagrima(人知れぬ涙)

Una furtiva lagrima                         あの女(ひと)の眼に
 negli occhi suoi spunto:                  ひそかに浮かぶ涙
 Quelle festose giovani                     色めき立つ娘たちを
 invidiar sembro.                             羨んでいるようだった。
 Che piu cercando io vo?                  僕はこれ以上何を求めようか
 Che piu cercando io vo?                  僕には分かる。
 M'ama! Si, m'ama, lo vedo. Lo vedo.あの女は僕を愛しているのだ。

Un solo instante i palpiti         ほんの一時だが
 del suo bel cor sentir!            彼女の美しい心の高鳴りを感じた!
 I miei sospir, confondere       もうすぐ彼女と僕のため息が
 per poco a' suoi sospir!        一つに溶け合う時がくるのだ!
 I palpiti, i palpiti sentir,        心のときめきを感じることができたなら、
 confondere i miei coi suoi sospir...    僕の溜め息と彼女の溜め息が混ぜ合うなら、、

Cielo! Si puo morir!                            神よ!僕は死んでもいい!
 Di piu non chiedo, non chiedo.           これ以上何も望むことはない。

Ah, cielo! Si puo! Si, puo morir!           神よ!僕は死んでもいい!
Di piu non chiedo, non chiedo.             これ以上何も望むことはない。
Si puo morir! Si puo morir d'amor.     僕は愛のために死ねるのだ。

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  姫路城好古園 


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2019年02月25日

スヴィリードフ組曲「吹雪」第1曲トロイカ

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 組曲「吹雪」より 第1曲トロイカ (プーシキン原作映画)

  作曲:ゲオルギー・スヴィリードフ

  ピアノ: 植村 照

昨年12月、プーシキン原作映画の組曲「吹雪」より第2曲ワルツをUPしたが、きょうは第1曲「トロイカ」。オケ向けに作曲されたが、聞けばピアノ演奏の方がよい。

このトロイカの曲風には19世紀ロシアの原風景を歌うようなメロディがあり、ロシアの大地を駆け巡る三頭立て馬車に秘められたトロイカのロマンが見える。

ゲオルギー・スヴィリードフ(1915年 - 1998年)は、ソビエト時代のロシア人作曲家。20世紀後半のロシアを代表する作曲家の一人。日本へはスケートのフィギァで第2曲のワルツが使われたぐらいで、ほとんどが届いていない。

全曲は、第1曲(トロイカ) 第2曲(ワルツ) 第3曲 (春と秋) 第4曲(ロマンス) 第5曲(パストラール) 第6曲(軍隊行進曲) 第7曲(結婚式) 第8曲(ワルツの残響) 第9曲(冬の道)。 

1964年ロシアの詩人・作家プーシキンの恋愛小説「吹雪」の挿入音楽を書いてから、10年後1973〜1974年に独立した組曲にする。

ゲオルギー・スヴィリードフはロシアの民族的主題に基づく作品を得意とし、国民的作曲家として人気が高い。you tubeで何気なく聞いた植村 照さんのピアノは、ロマン漂うロシアの

農村風景が何とも心地良く響き、何度も聞くはめになってしまった。先ほど見つけた植村さんのコンサート挨拶文に、曲の説明があり、それを見てうなづいたところである。



演奏者 植村 照さんによる曲のコンサート挨拶文。(曲が紹介されている)

https://www.uemuramusic.com/%E4%BC%81%E7%94%BB-%E5%88%B6%E4%BD%9C/sviridov-%E3%82%B9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%95/

第2ワルツ https://youtu.be/zECGrMwNDYI
第3春と秋 https://youtu.be/jHcmyWLnjnk
第4ロマンスhttps://youtu.be/1MLcMxcyMjc
第6軍隊行進曲https://youtu.be/_8W2UAwxpYw
第7結婚式https://youtu.be/haKuM8ZjIJ8

オーケストラ 全曲28分余り
https://youtu.be/I-0iXS_rzVQ

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  2月20日 姫路植物園クリスマスローズ展


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2019年02月18日

ロシアのロマンス 「月あかりの下で」

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きょうの音楽

ロシアの古いロマンス 「月明りの下で」 (В лунном сиянье) 

ロシアにはロシア歌謡から発展した「ロマンス」と言う芸術歌曲がある。19世紀後半からロシアの「ロマンス」が音楽ジャンルで大人気を呼んだが、ロシア革命により「ブルジョア遺物」とされ演奏禁止となった。

1950年になり「ロマンス」は再び解禁され、音楽ジャンルとして再生する。この曲は古ロマンスと呼ばれ、日本でいう懐メロの人気曲。映画音楽に使われているが、日本へは伝わっておらず、日本語訳がないので翻訳ソフトを使って訳してみるとトロイカの歌であった。

 鳴り響く、三頭立馬車トロイカは、ロシアの歌文化のテーマとされており、トロイカの鈴の音は美しくも哀しく響いている。日本で歌う「走れトロイカ」は楽団カチューシャによる陽気そうな歌だが、原曲は地主に恋人を奪われた、トロイカ馭者の嘆きの歌である。

「月あかりの下で」は、トロイカの原曲の意味とよく似た歌で、リンリンリンと鳴る鈴の音に併せ「若い妻と私の対戦相手が立っています」と、若妻の争奪を巡る厳しい場面がある。ロシアは明るい歌が発禁となった時代があり、この歌も同様ロシアの寂しい歌で、トロイカには悲しみをぶっける秘密が何かあるようだ。

作曲:
エフゲニー・ドミトリエヴィチ・ユリエフ Yevgeny Dmitrievich Yuriev(1882-1911) - ロシアの詩人、作曲家。ほとんど記録がなく、15曲のロマンス(ジプシーロマンスを含めて)が残されている。

歌詞:
フョードル ・ グリンカ(Fedor Glinka)のトロイカの詩から抜粋。

 
В лунном сиянье             月あかりの下で(自動翻訳)

В лунном сиянье снег серебрится,     月あかりの下で、雪が輝いている。
Вдоль по дороженьке троечка мчится.   道に沿って、トロイカは急いでいます。

Динь-динь-динь динь-динь-динь -      ディンディンディンディンディンディング -
Колокольчик звенит.            ベルが鳴っています。
Этот звон, этот звон о любви говорит.   この指輪、この愛の指輪は言います。

В лунном сиянье ранней весною       早春の月明かりの中で
Помнишь ли встречи, друг мой, с тобою.  私の友人あなたはその会議を覚えていますか。
                                                             

Динь-динь-динь динь-динь-динь -     ディンディンディンディンディンディング - 
Колокольчик звенит.            ベルが鳴っています。
Этот звон, этот звон о любви говорит.   この指輪、この愛の指輪は言います。

Колокольчиком твой голос юный звенел,  若い声の鐘が鳴った、
Это он, это он о любви сладко пел.     これだ、これだ愛について優しく歌いました。
                     

Вспомнился зал мне с шумной толпою,  騒々しい人でホールを思い出した
Личико милой с белой фатою.        かわいい白いベールと小さな顔。

Динь-динь-динь динь-динь-динь -        ディンディンディンディンディンディング -
Звон бокалов звенит.            ガラスの塊が鳴っています。
С молодою женой мой соперник стоит.   若い妻と私の対戦相手が立っています。
                                            

Динь-динь-динь динь-динь-динь -       ディンディンディンディンディンディング -
Звон бокалов звенит            ガラスの塊が鳴っています。
С молодою женой мой соперник стоит     若い妻と私の対戦相手が立っています。

Динь-динь-динь динь-динь-динь -         ディンディンディンディンディンディング -
Колокольчик звенит.              ガラスのベルが素晴らしく鳴っています。
Этот звон, этот звон о любви говорит.       この指輪、この愛の指輪は言います。

日本で馴染みのある”「トロイカ」は、原曲では馭者の涙歌である。以下は「東大音感合唱」によってトロイカの原曲を訳した歌詞。

 「トロイカ」の原曲歌詞

1 走るトロイカ一つ 雪のヴォルガに沿い
  はやる馬の手綱(たづな)とる 馭者(ぎょしゃ)の歌悲し
  はやる馬の手綱とる 馭者の歌悲し

2 何を嘆く若者 尋ねる年寄り
  なぜお前は悲しむ 悩みはいずこに
  なぜお前は悲しむ 悩みはいずこに

3 去年のことだよおやじ 好きになったのは
  そこへ地主の奴めが 横槍を入れた
  そこへ地主の奴めが 横槍を入れた

4 クリスマスも近いが あの娘(こ)は嫁に行く
  金につられて行くなら ろくな目にあわぬ
  金につられて行くなら ろくな目にあわぬ

5 鞭もつ手で涙を 馭者はおしかくし
  これでは世も末だと 悲しくつぶやく
  これでは世も末だと 悲しくつぶやく

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  淡路夢舞台                    



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2019年02月11日

沢 知恵「われ問う」

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 安倍首相は2月10日の党大会で、夏の参院選に向けて戦い抜き、先頭に立つ決意だと訴え、改憲は悲願であると強い決意を示した。

 2019/02/10 時事通信
自民党は2月10日、第86回定期党大会を東京都内のホテルで開催した。安倍晋三首相(党総裁)は演説で、4月の統一地方選と夏の参院選が重なる12年に1度の「亥(い)年選挙」に向け、「厳しい戦いになるが、まなじりを決して戦い抜く先頭に立つ決意だ」と訴え、結束を呼び掛けた。
憲法改正の実現にも改めて意欲を示した。
首相は、第1次政権時の2007年参院選で惨敗した経験を振り返り、「私の責任であり、片時たりとも忘れたことはない」と語った上で、今年の一連の選挙で必勝を期す方針を強調した。
改憲について、首相は「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときが来た」と表明。「憲法にしっかり自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」と力を込めた。 


今日の音楽

沢 知恵 「われ問う」

改憲を目指す安倍政権に、夏の選挙の勝利で改憲をやらせてはならない。沢 知恵の「われ問う」の山本宗補「戦後はまだ… 刻まれた加害と被害の記憶」のように、戦争で悲惨な体験をした人達を忘れてはならない。いまの安部政権は信頼出来ない。

音楽:
沢 知恵はシンガーソングライター。コモエスタ、ともえ基金代表(瀬戸内海のハンセン病療養所、大島青松園でのコンサート経費を支えるサポート基金)1971年生まれ。日本、韓国、アメリカで育つ。東京芸術大学楽理科在学中にデビュー。最新作〈われ問う〉含め27枚のアルバムを発表。第40回日本レコード大賞アジア音楽賞受賞。

写真と文:
山本宗補「戦後はまだ… 刻まれた加害と被害の記憶」から。
山本宗補写真集『戦後はまだ…』(彩流社、2013年)日本版ピューリッツァー賞ともいわれる第19回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞


「われ問う」 沢 知恵:詞/曲

大好きなおじいちゃん 
どうしてこの国は戦争したの?
おじいちゃんほどの人が
 どうして戦争を止められなかったの?

大好きなおじいちゃん
 ほんとうのこと教えてよ
 どうすれば同じあやまちを
 くり返さなくてすむの

ここまでなら大丈夫と 
だまって見ているうちに
気づいたら 何ひとつ自由に
 ものを言えなくなっていた

大好きなお父さん
 どうしてあの人たちを見捨てたの?
お父さんほどの人が
 どうして見て見ぬふりをしたの?

大好きなお父さん
 ほんとうのこと教えてよ
 もしかしたら私いま だれかのことを
見て見ぬふりしているの?

私なりにかかわり
 せいいっぱいやったつもりでも
時代の重さとはやさに 
 押しつぶされて流された

愛する子どもたち
私はあなたを守りたい
 はじける笑顔
いついつまでも消えないでほしいから

愛する子どもたち
 おろかなおとなに語っておくれ
正義と愛とまことと夢と希望と未来を

いまどうしてだまっているの?
いま何を迷っているの?
だれと生きていきたいの?

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  姫路城好古園 2月4日



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2019年02月07日

北原白秋「雀の卵」序文より

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  北原白秋 雀の卵

  「閻魔の咳」 

  冬の光 しんかんたるに 真竹原 閻魔大王の 咳しはぶきのこゑ

  「雪夜」

  いまだ起きて 火だねりゐたり さらさらと あたりの沈黙しじに 雪のさやる音  

冬の光で震撼とした竹林、積もった雪の重みでしなった竹が一瞬、ドサーと大きな音を立てた。その音は閻魔大王の咳のしぶきように聞こえた。

雪夜の詩、火だねを「埋めるたり」が、文庫版「雀の卵」覚書では、火だねを「守りゐたり」と訂正され、夜遅くまで囲炉裏火を絶やさず、降る雪の障る音の気配が強まっている。

さて、「雀の卵」で興味が湧いたのはその序文である。大正10年8月(白秋35才)アルスより出版。以下、長い序文より一部を抜粋する。

「雀の卵」此の一巻こそ私の命がけのものであつた。この仕事を仕上げるばかりに、私はあらゆる苦難と闘つて来た。貧窮の極、餓死を目前に控へて、幾度か堪へて、たうとう堪へとほしたのも、みんなこれらの歌の為めばかりであつた。
だからたとへ拙くともこれらの一首一首にはみんな私の首が懸つてゐる。首の坐に直つて歌つたものばかりだ。
そしてたうとう今日が来た。
此のこれらの歌は大正三年からぽつぽつ作り出して、足かけ八年目の今月今日、大正十年七月十四日午後三時にたうとう最後の朱を入れて了つたのである。
私の前に今冷たい紅茶が運ばれて来た。
私はぐつとそれを一息に飲み干して了つた。蝉の声がする。涼しい海の風が吹きぬけてゆく。私は生きかへつた。
抜粋は以上。

雀の卵は525ページに渡る大作である。足掛け8年かけて出来上がったこの喜びの作品は、大6、弟・鉄雄と創立した出版社アルスから発刊された。

始めて結婚した俊子と別れたのは大3、そして大5には章子と再婚。その妻章子の浮気で大9に離婚、翌大10、生涯の妻となる菊子と再婚した。

「雀の卵」は女性3人との離婚と結婚とを繰り返す最中の作品である。2人目の女性までは、家庭の規格の中に収まりきれない過剰なものを持ち合っていたが、3番目の菊子で無事収まった。

人生の中で最も波乱に満ちた30代半ばの白秋である。詩人らしく率直に自分の苦しさを綴っている序文には感動。「雀の卵」は北原白秋のその後の大成の礎となった。

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きょうの音楽

ヴィヴァルディ「4つのヴァイオリンのための協奏曲」ロ短調 RV 580 「調和の霊感」

演奏:イル・ジャルディーノ・アルモニコ( Il Giardino Armonico)

ヴィヴァルディ作品の演奏で名を揚げている素晴らしいイタリアの古楽アンサンブルである。1985年にルカ・ピアンカとジョヴァンニ・アントニーニによってミラノで結成、17ー18世紀以前の音楽を古楽器で演奏している。
Vivaldi Concerto for 4 violins in B minor, RV 580 Il Giardino Armonico


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  播磨中央公園2月2日 冬薔薇は剪定されて消え人影もなく、道端に蝋梅が咲いていた。



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2019年02月01日

冬の明方 中原中也

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 ひょうごフラワーセンター温室のベゴニア



冬の明方
   中原中也

残(のこ)んの雪が瓦(かわら)に少なく固く
枯木の小枝が鹿のように睡(ねむ)い、
冬の朝の六時
私の頭も睡い。

烏(からす)が啼(な)いて通る――
庭の地面も鹿のように睡い。
――林が逃げた農家が逃げた、
空は悲しい衰弱。
     私の心は悲しい……

やがて薄日(うすび)が射し
青空が開(あ)く。
上の上の空でジュピター神の砲(ひづつ)が鳴る。
――四方(よも)の山が沈み、

農家の庭が欠伸(あくび)をし、
道は空へと挨拶する。
     私の心は悲しい……


屋根瓦には僅かな残雪、枯れ木の小枝は鹿のごとく眠い。真冬の早朝の6時、頭はいまだ眠ったまま。林や農家は自分の視野から逃げ去ち、空は悲しく衰弱し自分の心も悲しい。

やがて日も差し昇り、ジュピターの万能の神が大砲を撃ち、やっと山が沈み込む。さすれば農家の庭も目覚め欠伸し、道は夜明けの空へと抜けるのである。

それでも自分の心は悲しいまま、いまだ覚めない。さぁ、目覚めよとばかり、朝日が差し込み雪も止みカラスの泣き音も聞こえるが、いつまでも寝ていたい中也冬の明方である。

「冬の明け方」は 「歴程」4月号1936年(昭和11年4月)に発表。中也が亡くなる1年前。1938年(昭和13 年)4月に発行された中也の自作自選の第2詩集「在りし日の歌」に収められている。


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きょうの音楽


春よ、来い - 松任谷由実  

まだまだ春は遠いがやがてやってくる。沈丁花は2月末から花を咲かせ、その香りで春の訪れが近いことを知らせてくれる。


春よ、来い:松任谷由実

淡き光立つ にわか雨
いとし面影の沈丁花
溢るる涙の蕾から
ひとつ ひとつ香り始める
それは それは 空を越えて
やがて やがて 迎えに来る
春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
愛をくれし君の なつかしき声がする

君に預けし 我が心は
今でも返事を待っています
どれほど月日が流れても
ずっと ずっと待っています
それは それは 明日を越えて
いつか いつか きっと届く
春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まるとき
夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く

夢よ 浅き夢よ 私はここにいます
君を想いながら ひとり歩いています
流るる雨のごとく 流るる花のごとく

春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
愛をくれし君の なつかしき声がする

春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まるとき
夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く

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2019年01月26日

淡雪 金子みすゞ

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 姫路書写の里・美術工芸館

   淡雪

  雪がふる、
  雪がふる。

  落ちては消えて
  どろどろな、
  ぬかるみになりに
  雪がふる。

  兄から、妹から、
  おととにいもと、
  あとから、あとから
  雪がふる。

  おもしろそうに
  舞いながら、
  ぬかるみになりに
  雪がふる。

すぐにも消えてしまう雪ならではの、おもしろい表現である。雪の表情がみんな違っていて、兄雪、妹雪、弟に妹などとはしゃいでいる。

降る雪がさまざまな姿でふんわりと舞い降りるのが淡雪であり、なんとも、みすずらしい。きょうは急激に寒くなり、強い風で姿が見えない小さな雪が舞っていた。

幼い中原中也に「冬されよ」がある。

冬去れよそしたら雲雀(ひばり)がなくだろう桜もさくだろう
冬去れよ梅が祈っているからにおまえがいては梅がこまるぞ
冬去れば梅のつぼみもほころびてうぐいすなきておもしろきかな

12才、尋常小学六年の時に、地元新聞に載せられた作品であるが、幼さが気持ちいい。まだ1月である。梅や雲雀はまだまだ先のこと、長らくは野山の枯れ木を眺めるしか外にない。 

きょう姫路書写の里・美術工芸館で押絵の展示があるとのことでへ出かけた。押絵のみ撮影禁止で撮影が出来ずに残念。姫路の伝統工芸品と他に、昔懐かしい北陸から九州まで、全国各地の郷土玩具が展示されている。

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きょうの音楽

文部省唱歌「青葉の笛」(明治39年)  

源平合戦「一の谷の戦い」

平家には横笛の名手若き武将の平敦盛がいた。一の谷の合戦で逃げ遅れた敦盛は、源氏の熊谷直実と一騎打ちとなり組み伏せられた。首を取ろうと敦盛に刃を向けると、息子と同じ14、15、才の若武者であった。

逃がそうとしたが敦盛は断りつづけたので泣く泣く首を取った。敦盛の腰袋には彼が戦場でいつも吹いていた名笛「青葉」があった。「荒ぶる戦場で、夜な夜な聞こえていたのはこの笛だったのか」と無常を知る。

後に熊谷直実は法然上人の弟子となり高野山へ入り、法然の勧めで1190年敦盛の7回忌を行なった。2番は忠度卿の都落ち。一の谷に向かう途中真夜中、都へ引き返し俊成卿の門を叩き勅撰和歌集へ幾つかの私撰和歌を託した。戦いの最中、忠度は歌への情熱を忘れてはいない。

如何に命を賭けた戦があろうとも、音楽や文学を愛した文武両道のサムライ達。それを讃えた明治の文部省の気迫を感じてしまう。

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2019年01月19日

恋ひ恋ひて 

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  ソシンロウバイ


式子内親王が亡くなってから丁度100年後の1301年鎌倉時代、新後撰和歌集(13番目の勅撰和歌集)に式子の恋歌が選ばれた。

恋ひ恋ひて そなたになびく煙(けぶり)あらば いひしちぎりの はてとながめよ   式子内親王
                                                                                            新後撰和歌集恋四

近い内に、そちらの方でなびいて行く煙が見えたならば、あなたとの愛の約束に燃え尽きた私の命です。行く末と思って眺め憐れんでやってください

鎌倉幕府が終わるまであと30年、蒙古襲来も既に30年前に終わった平和な頃である。新後撰和歌集にも多くの恋歌が収められいるが、中でもこの歌は秀作である。

この時代、恋ひ恋ひと続けての恋表現はひと際目を引くもので、結婚が禁止されていた天皇家の子女が詠めば、恋の切なさが倍増して伝わってくる。

新後撰和歌集の勅宣:後宇多天皇
正安三年(1301)に下命。成立は嘉元元年(1303)



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 冬薔薇 



きょうの音楽


ジムノペディ (Gymnopedies)

エリック・サティ作曲 1888年作曲したピアノ独奏曲

3/4拍子のゆっくりテンポ、愁いを帯びた旋律で第1番〜第3番までそれぞれに指示がある。 ここはゆっくりとパリの風景画を楽しみながら。

第1番「ゆっくりと苦しみをもって」 (Lent et douloureux)
第2番「ゆっくりと悲しさをこめて」 (Lent et triste)
第3番「ゆっくりと厳粛に」 (Lent et grave)



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 1月11日 ひょうごフラワーセンター 


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