五嶋みどりの「サパテアート」イル・ディーヴォ Time To Say Goodbye

2019年07月06日

孤独な式子内親王

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  人知れぬ 思ひのみこそ 侘しけれ
        わが嘆きをば 我のみぞ知る   紀貫之 古今集

人知れず燃えてしまう片思いの恋は、とっても切なく辛いのです。燃える想いを嘆くその辛さは、自分にしか知ることが出来ません。

当時和歌で「忍ぶ恋」を詠えるのは男性で、女性が忍ぶ恋を歌にすることは出来なかった。式子はこの紀貫之の歌を本歌として、自分の片思いを男歌として次のように詠んでいる。


  忘れては うち嘆かれるる 夕べかな
        我のみ知りて すぐる月日を   式子内親王  新古今集

胸に秘めた恋を忘れようと、夕暮れ時になると、ふとため息をついてしまうのです(うち嘆かれるる)。自分にしか分からない辛い月日をこれまで長い間過ごしてきたのです。本歌は冒頭の紀貫之「人知れぬ〜我のみぞ知る」

夕暮れになると貴族社会では手紙のやりとりで男女の出会いが始まる。天皇の娘である式子は、男から手紙が来るのを待つだけであった。

自分にしか知らない片思いで過ごした辛い月日、式子は秘めた恋を忘れようと、ふと出てしまった夕暮れの溜息、自分は孤独な女性歌人であると正直に詠っている。


男が詠う忍ぶ恋に敢えて進展させた式子、本歌の紀貫之を越え重みのある歌となっている。同じ忍ぶ恋でも、女性の垣根を越えた式子のほうに実感がこもっている。


きようの音楽


シューベルト  アベマリア

ソプラノ バーバラ・ボニー

偉大なリリック ソプラノ、バーバラ・ボニーが歌う。イギリスの歴史小説家、ウォルター・スコットの韻文小説「湖上の美人」中の詩に、シューベルトが曲を付けた作品。聞いていると崇高な歌唱力にいつのまにか浸ってしまう。


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naturococo at 00:04│Comments(2)

この記事へのコメント

1. Posted by じゅんちゃん   2019年07月11日 16:53
haruka1さん、こんにちは。

空梅雨と思っていたら、今日はいっぱい降りました。

雨の日に聴くアベマリア、不思議な風情があります。

天皇の娘に生まれて、並外れた才があった内親王は、どれほど生きにくかったことかと思います。現実とも虚構とも言えない歌の世界のなかでだけ、自らをほんの少しはばたかせることができたのでしょうか。

お写真、すてきです。
2. Posted by haruka1   2019年07月11日 19:49
じゅんちやんさん、こんばんは。
外は時折激しい雨が降っていますが、梅雨もあとわずかですね。

数少ないリリックソプラノのバーバラ・ボニー、このようなアベマリアを歌うと、とっても自然で素直です。無理のないいい歌い方です。

現在のいずれの内親王の方々も、自由な恋は難しく、いまも昔も戯れの恋などは出来ないようですね。式子のように自分を磨くような生き方に自然となっていくような気がします。

そろそろ、向日葵が咲きだしています。少ししか歩けませんが毎年出かける作用町のひまわり祭りへ、連休にでも出かけ見ます。

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