2020年01月16日
積もった雪 金子みすづ
積もった雪
金子みすゞ
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろな。
空も地面じべたもみえないで。
あかい椿は伐きられたし、
黒い御門もこわされて、
ペンキの匂うあたらしい、
郵便局がたちました。
郵便局の椿 | ||||
あかい椿が咲いていた、 | ||||
郵便局がなつかしい。 | ||||
いつもすがって雲を見た、 | ||||
黒い御門がなつかしい。 | ||||
ちいさな白い前かけに、 | ||||
赤い椿をひろっては、 | ||||
郵便さんに笑われた、 | ||||
いつかのあの日がなつかしい。 | ||||
あかい椿は伐られたし、 | ||||
黒い御門もこわされて、 | ||||
ペンキの匂うあたらしい、 郵便局がたちました。 |
踏みつけれる雪がそれぞれ上、中、下にあるという表現が楽しい。兄、妹、弟にも分け隔てなく、みすゞの故郷山口県長門市にも淡雪が降る。
幾重にも雪が踏まれ、またその上に雪が積る。あとから勝手きままに、ぬかるみになるために雪は降ってくる。何とも金子みすゞ らしい。
赤い椿が咲いていた郵便局が壊されて椿が伐られたとか、ところでいまは雪中4花の寒椿、蝋梅が真っ盛り。残り二つの水仙と梅がまもなく揃って咲く様子、暫くは待ち遠しい。
赤い椿白い椿と落ちにけり (河東碧梧桐)
蝋梅や 雪うち透す 枝のたけ (芥川龍之介)
水仙の 香やこぼれても 雪の上 (加賀千代女)
梅一輪 一輪ほどの 暖かさ (松尾芭蕉の弟子服部嵐雪)
きょうの音楽
ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
ピアノ:アンナ・フェドロヴァ(Anna Fedorova 1990年ー ウクライナ・キエフ出身)
演奏:北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団(Nordwestdeutsche Philharmonie)
指揮:マーティン・パンテレーエフ(Martin Panteleev)
フェドロヴァの気品溢れるすばらしい演奏で感動させられる。
ルービンシュタイン国際ピアノコンクール(2009年)で優勝以来、アムステルダムの「コンセルトヘボウ」やパリのコンサートホール「サル・コルトー」などで演奏を重ねている。


この記事へのコメント
椿のお写真、素晴らしいです!
金子みすゞさんの詩は、どんな感情の吐露も、ひたすら清らかなんですね。

アンナ・フェドロヴァ、見事ですねえ!!
写真の椿は3年ほど前のこの時期の作品です。瀬戸内に咲くのですが、潮風にあたり花はすぐに傷むので咲いた早々の花を探します。作品をほめて下さってありがたいです。
金子みすゞの作品はどれもが、童話を語るような心やさしさに溢れていて心地いいです。年齢を重ねてくるとなおさら心に滲みてきます。
そうそう、アンナ・フェドロヴァ、この演奏を聴いてすごく感動。上品さとテクニックの素晴らしさに驚きました。