2020年02月12日
中原中也「冬の日」
中原中也
冬の日 「中原中也全詩集」より
私を愛する七十過ぎのお婆さんが、
暗い部屋で、座って私を迎えた。
外では雀が樋に音をさせて、
冷たい白い冬の日だつた。
ほのかな下萠(したもえ)の色をした、
風も少しは吹いてゐるのだつた、
私は自信のないことだつた、
紐を結ぶやうな手付をしてゐた。
とぎれとぎれの口笛が聞こえるのだつた、
下萠の色の風が吹いて。
あゝ自信のないことだつた。
紙魚(タコ)が一つ、颺(あがって)ゐるのだつた。
この正月に西脇順三郎と同じ題名の「冬の日」をUPしたが、今日は中也の冷たい白い「冬の日」を取り上げた。寒風が吹き、風が鳴り響く真冬の日、風よタコよ、お前達は何しにきたのかと、中也らしく一匹のタコに問うている。
下萠(したもえ)=早春、地から草の芽が萌え出ること。
颺(あがって)ゐる=風に吹き上げられる。昭和3年(1928年)真冬1月の作品。
早春賦 作曲 中田章 作詞 吉丸一昌
日本を代表するソプラノ歌手。佐藤しのぶさん
(1958年〜2019年)が昨年10月61才の若さで亡くなった。ご冥福をお祈り致します。
「賦」=早春に漢詩を歌ったり作ること。間もなく暖かくなる3月がやってくる。さて、佐藤しのぶと言えば荒城の月、これも併せて。 作詞 吉丸一昌 編曲 三枝斉昭ら(曲)中田章
荒城の月 作曲 瀧廉太郎 作詞 土井晩翠
たつの市 世界梅公園陳列
naturococo at 00:27│Comments(3)│
この記事へのコメント
1. Posted by じゅんちゃん 2020年02月18日 11:11
haruka1さん、こんにちは。今朝は雪景色でした。
中也はなんとなく冬の詩人という思いがしますが、この詩もいいですね。「私を愛する七十過ぎのお婆さん」、いろいろ詮索もできそうですが、菩薩のようなおばあさんが無条件に「私」を愛してくれている、と思うとなんだか嬉しくなります。
佐藤しのぶさん、本当に残念でしたね。「荒城の月」凄いですねえ!!
中也はなんとなく冬の詩人という思いがしますが、この詩もいいですね。「私を愛する七十過ぎのお婆さん」、いろいろ詮索もできそうですが、菩薩のようなおばあさんが無条件に「私」を愛してくれている、と思うとなんだか嬉しくなります。
佐藤しのぶさん、本当に残念でしたね。「荒城の月」凄いですねえ!!
2. Posted by haruka1 2020年02月18日 13:04
七十過ぎの菩薩のようなおばあさん、私を愛してくれているとは、何とも言えない詩人の表現。
佐藤しのぶからこれまでに沢山感動をいただきました。素晴らしいソプラノです。
佐藤しのぶからこれまでに沢山感動をいただきました。素晴らしいソプラノです。
3. Posted by 高遠信次 2020年12月15日 14:50
中原中也が二人を結び付ける恋愛小説「こんやここでのひとさかり」を出版しました。ご購読いただければ、幸いに存じます。https://stakatoo.p-kit.com/