2020年01月30日
アールヌーボ ミュシャの世界
ミュシャの世界
19世紀末より〜20世紀にかけてヨーロッパを中心にアールヌーボ(Art nouveau)が新しい芸術として開花した。様式にとらわれずに、家具、宝飾、絵画 グラフィック装飾などで、多くの芸術家達が挑戦した。
アールヌーボのスタートは、1895年12月26日、パリ・プロヴァンス通りの美術商「メゾン・ド・ラール・ヌーヴォー」( Maison de l'Art Nouveau)の、お店の看板から始まった。
アルフォンス・ミュシャ(1860年 - 1939年)も、商業用ポスターや装飾パネルなどで、アールヌーボ画家としてパリで活躍し、油彩画による厳粛な宗教画でも成果を上げている。
50才の時、残り人生を我が同胞に捧げるとパリを去り祖国プラハで、民族の独立、自由の象徴を目指し、17年間かけて(1910年〜1928年)壁画サイズの「叙事詩」20点を制作する。
ミュシャによる 「スラブ叙事詩」
「原故郷のスラブ民族」 右端人物を、左の日本展ポスターAlfons Muchisに使う。
「スラブ民族の賛歌」
輝く光の中に人々が配置されて、独立への強い意思を表示している。人々をチェコの希望の星として描いたのである。1918年にチェコはオーストリア、ハンガリーの二重帝国から独立を勝ち取った。
中央部の画面には聖なる葉の輪を両手でかざした青年がスラブの賛歌を表している。その青年の後ろに大きくイエスキリストが描かれている。
「セルビア皇帝ステファン・ドウシャン」 「フス派の王ポジェブラディとボヘミア王
東ローマ帝国の戴冠式。 クンシュタート」権威争いの場面。
「スラヴ式典礼の導入」 「ロシア農奴解放の日」 モスクワの
モラフスキー・クロムロフ城 赤広場で告げるロシアの役人と人民。
モラビアでスラブ民族初の城を築く。
「ペトル ・ヘルチツキー」中央人物。 「ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭」
左上 絵画のサブタイトルー悪をもって悪に報いるべきではないー
反フス派により街に攻撃をしかけられ、フス派全員の殺害と市民の大量虐殺が描かれている。ペトル・ヘルチツキーは謙譲と忍耐と労働を、著作や説教で主張している。
「悪をもって悪に報いるべきではない」の提言。暴力によらない宗教革命の方法を求め実践する、中世最大の偉人のへルチツキーを中心として、当時のチェコは、ヨーロッパにおける社会思想で最先端にいた。
カトリックのヴワディスワフ王は、チェコ国内のフス派を帰服させようとした。ところがヘルチツキーのフス派の市民達が暴動を起こし(1483年)、自分たちの信仰を守り抜いた。
右上 絵画のサブタイトル ー神々が戦いにあるとき、救済は諸芸術の中にあるー
スラヴ族が神を称えて収穫の祝いの宴を行う。バルト海沿岸はデンマーク軍によって征服され神殿は壊され、スラヴの文化は衰退の一途をたどる。その過去、現在、未来を描く。
白百合の中の聖母(下2枚)
The Madonna in Lilies 1905年
アールヌーボを代表する画家のミュシャ、エルサレム教会の装飾画に構想していた「白百合の中の聖母」をアメリカ滞在期に制作した。904年から1910年までに数回滞在)に制作した。
純潔のシンボルである百合の花に包まれ、チェコの民族衣装を纏った聖母マリアが、少女を愛しく包む油彩画。(1905)
ミュシャのポスター (下2枚)
左下、演劇「公妃ジスモンダ」(GISMONDA)
アテネ公妃(ジスモンダ)役に扮する女優サラ・ベルナール“SARAH BERNHARDT”の名が見える。花を髪に飾り演劇のクライマックスを象徴するシュロの葉を手にしている。
“GISMONDA” の文字は舞台タイトル。舞台はパリにあるルネサンス座。足元に劇場名の “TEATRE DE LA RENAISSANCEと書かれている。
女優サラは、「ジスモンダ」のポスターを見て、なんて素晴らしい!と、これからは私のために描いて!と叫んだ。
右下、お菓子のビスケット・シャンパンの宣伝広告ポスター。
ルフェーヴル・ユティル社の愛称 リユ “ LU” のフランス ビスケット。
演劇 公妃ジスモンダ(Gismonda) ルフェーヴル・ユティル社のビスケット広告
ミュシャ その他
ヒヤシンス姫 草桜 羽根
きょうの音楽
シベリウス : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
バイオリン ヒラリー・ハーン
前回に続いてヒラリ・ハーンのすばらしいヴァオリン演奏。北欧フィンランドの匂いが一杯に満ちた凄みのある曲で、第1楽章のスケールの大きさはバイオリン協奏曲にしては別格。
シベリウスは出来上がってから、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の出だしの第1楽章を参照に改定した。この冒頭部分について「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」と語る。
Sibelius : Concerto pour violon (Hilary Hahn)